Mirlard!(ミルラード!)
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STORY

 

第12話 大和国でのお祭り見物
ロアたちは船に乗って大和国を目指していた。今回は、エルフの商人、
ガーネルドのお誘いで大和国の都市、江戸で行われる祭りに参加するため
だった。レオンがその話をベルナルドにした時はフォルミルスにも
勉強のためにも行って来いと支持を出して、フォルミルスも一行に
付いていくことになった。

大和国だが、小さな島国で、ちょうど日本でいう江戸時代のような和の文化が
発達した独特な国で、天皇と将軍が支配している国だった。かつては、
天皇が率いる朝廷が政治、軍事、文化を担っていたが、B.C.404年、
元禎(げんてい)21年頃には軍隊を解散させ、天皇が住む京周辺のみを
警備するようにした。そのために土地を守るものがいなくなったため、
B.C.210年、神乾(じんかん)元年あたりには武士が台頭するようになり、
徐々に武士が国を動かすようになっていった。朝廷側も天皇を警護する
「滝口の武士」、上皇を警護する「北面の武士」を置き、武士も重用する
ようになっていった。

B.C.125年、天弘(てんこう)9年には将軍・松平栄喜(まつだいらひでのぶ)
が国を政治を行うために地方に守護と地頭を置き、武家政権である幕府を
成立させた。それからは、幕府が政治、軍事を担い、朝廷が文化を担うように
なっていった。だが、朝廷が政治、軍事の実権を取り戻すためにB.C.88年、
文政(ぶんせい)3年に天皇直属の武士を増やし、これを「西面の武士」と
した、そして、B.C.86年、養貞(ようじょう)2年に朝廷と幕府による
内戦が始まった。それから2年後の養貞4年に当時の天皇である
聖清(しょうせい)天皇が崩御し、翌年には将軍・松平守久(もりひさ)も
逝去し、その年であるB.C.83年、大昭(たいしょう)元年に朝廷と幕府、
懿正(いしょう)天皇と将軍・松平晴宣(はるのぶ)が講和を結び、
西面の武士も解散、滝口の武士か北面の武士に組み入れられるようになった。
以後、幕府が政治、軍事を担い、朝廷が文化を担うという形が定着してきた。
また、B.C.10年頃、吉雉(きつち)18年頃から魔王軍が侵攻してきたため、
国を守るために朝廷側と幕府側が団結して魔王軍の侵攻を食い止めていた
時期もあった。そのため、大和国の一部が戦場になったりもした。

414年、鳥興(ちょうこう)16年には、大和国は将軍・松平邦綱(くにつな)
によって鎖国政策をとるようになり、これによって大和国の独自の文化である
和の文化が栄えることになったが、淳允(じゅんいん)天皇の進言により
大和国も外国との交易、交流が必要と説き、幕府の閣僚たちが議論を重ねて、
620年、観安(かんあん)元年には、将軍・松平治尚(はるひさ)の命により
開国し、諸外国と和親条約、通商条約を結んでいった。ミルラード王国も
当時の国王であるユスティニアヌス3世が625年、観安6年に通商条約を結び、
大和国と交易を結ぶようになっていった。


ロアたちは、江戸に着くと大和国をよく知るガーネルドと共に江戸の街を
見物していた。ロアたちは、その街の独特の雰囲気に驚いていた。
「いやあ、面白い、本当に変わった文化を持っているんだな。」
「ミルラードとは全然違うわね。街も人も綺麗でいいじゃないかしら。」
ローランもそのように話す。レオンも、
「なんかガーネルドのとこの店がそのままそっくり街になったような感じだな。」
ペティオスは、髪型に注目して、
「なんかみんな変わった髪型をしているね。」
と言った。それに対してガーネルドは、解説する。
「あれは、『ちょんまげ』という大和国独自の髪型なんだよ。」
「不思議だ。国も人々も独自の文化を持っているんだな。」
と、フィムは語り、フォルミルスはその街や人々を見ながらメモを取っていた。
ガーネルドは言う。
「な、大和国は面白くて良い国だろ。一度連れてきたかったんだ。」
そして、ロアたちは江戸見物を楽しんでいた。

しばらくすると、お忍びでやって来ていた上皇の一行が傾き者たちに襲われて
いるのを発見した。上皇の一行は、
「院(上皇のこと)のお通りである道を開けよ。」
と叫ぶと、傾き者の一人は、
「院と言うか、犬と言うか、犬ならば射ておけ!!」
と言って上皇の一行に矢を射かけた。だが、この矢じりは丸くなっていたので
当たっても怪我はしなかった。威嚇のための矢と言えた。
その光景を見ていたロアたちは、傾き者たちの所にやって来て、
「どこの偉い方かは知らないが、いじめるのは良くないな。」
「何だと、こんな上っ面だけで威張っている奴らはこうしておけば
いいんだよ!!」
「だからって何も矢を射かけることはないだろう。」
「うるせぇ!!毛唐(外国人のこと)が、俺たちとやるのか!!」
そこでロアは、みんなに合図を出した。レオンは、
「やるのか、面白れぇ!!」
と言って、剣を抜いた。
「どれ、僕も一つ暴れますかね。」
フォルミルスも剣を抜いて相手と対峙した。
「ガキともが、舐めるんじゃねぇ!!」
「ほらほら、お前ら少しは頭を冷やせ。」
こう言ってフィムは魔法で水を出し、傾き者たちに浴びせかけた。
「くそっ、何しやがる!!」
そして、傾き者たちが刀を振りかざしてロアたちに切りかかってきた。
だが、ロアたちも負けずに剣で応戦していった。そして、北面の武士たちも
それに続いて切り合いとなった。そして、傾き者たちは次々と倒されていった。
「くそっ、覚えてろ!!」
そうして傾き者たちは逃げていった。

ロアたちが剣をしまった後は、上皇が輿から降りて、ロアたちにお礼を言った。
「いやあ、助かりました。ありがとうございます。」
「私たちは、ミルラード王国から来たもので、祭りを見物しに来ました。」
ロアが、話す。続けてガーネルドが、
「どこの偉い方かは知りませんが、お怪我がなくて良かったです。」
「私は、前の天皇で、今は、顕寧(けんねい」)上皇と名乗っております。」
「えっ!!上皇様!?」
ガーネルドは驚いた。レオンは、ガーネルドに聞いた。
「上皇様??そんなに偉いのか??」
「ああ、かつて天皇だった人だ。そんな方と接することになるとは…。」
「天皇だった人なのか…。」
そして、上皇は語った。
「本当に助けて下さってありがとうございました。是非とも息子に合って
頂きたい。息子は京で天皇をやっておる。私から話しておくから是非とも
会ってやってくれんか。」
ガーネルドは驚いた。
「そんな、もったいないお言葉を。ありがとうございます。是非とも。」
上皇にそのように答えた。そして、ロアたちは、京にいる天皇に会いに
行くことになった。上皇に付き添っていた上皇の息子で天皇の弟である
宗良(むねなが)親王が父上皇の手紙を受け取り、その後で京にいる
天皇の元へ、ロアたちを先導していった。

ロアたちは、顕寧上皇を助けたことで、上皇の息子の宗良親王の導きで
4日かけて京に入った。そして、宗良親王が兄の霊明(れいめい)天皇に
父上皇からの手紙を渡し、ロアたちを天皇に会わせるための仲介を
行い、さらに関白の近衛久麿にも頼んでロアたちを天皇の謁見の間に
導いた。大和国の開国の前までは、天皇は官位を持っている人にしか
謁見しなかったが、開国後は、天皇も積極的に庶民の前に出るようになり、
官位を持っていない人への謁見も積極的に行うようになった。
そして、ロアたちは、謁見の間で霊明天皇と対面することになった。

「この度は、我が父上をならず者たちから助けて下さったことに礼を
申す。本当に感謝いたす。」
その言葉にロアたちは、天皇に礼をした。
「ところで、そなたたちは、外国人のようだが?しかもそなたは、エルフで
ありながら我が国の和服を着ておるとは。」
謹んで、ガーネルドは答える。
「はい、我々は、ミルラード王国から来た者です。そして私は、ミルラード
王国で商人をやっております。私の店は、貴国から輸入した様々な商品を
売っております。なので、店舗も和風に作られております。何かと、
貴国の文化や和の雰囲気が大好きなものですので。」
「おお、我が国の文化をここまで理解しておられるとは、嬉しい限りじゃ。
して、ミルラードとは、我が国とも通商をしておるようじゃが、そこの国の
者と会うのは初めてじゃ。ミルラードとは、どのような国かの?」

そこでロアは答えた。
「はい、ミルラード王国ですが、他の国と同様、ロムルグランス帝国の影響を
多く受けた、洋服の国であり、西洋文化の国でございます。元々は、かつて
魔王軍が侵攻してきた時の魔王軍の拠点でもあった地ですので、
モンスター系の種族の者たちも数多く住んでおります。我が国では、
モンストラスというモンスター系の種族が治めている町もございます。
あと、兵士たちは皆、騎士道精神にのっとって行動をしております。」
「ほう、騎士道精神とな。さぞかし、皆礼儀正しいのであろうな。」
「そんな騎士道ですが、私はあまり好きではございません。がんじがらめで
厄介なものと心得ております。自分の故郷では、喧嘩ばかりしておりました。」
「そうなのか。そなたは傾き者なのか?」
「いいえ、傾き者ではございません。一介の魔剣士でございます。そして、
私は、国王メルティフェクス7世に仕えている者でございます。」
「メルティフェクス…確か、国王はニーズロットではなかったのか?」
「今は、息子であるメルティフェクス7世に譲位しており、ニーズロット6世
は、国王のアドバイザーの役割をしております。」
「そうなのか。ミルラード…いつか訪問してみたい国よのう。」

それから、フォルミルスを指し、
「そなたは、それなりに身分があるようじゃのう。」
「はい、私は、ミルラード王国の諸侯のラインハルト家の者で、私の父
ベルナルドがミルラードの南の島を治めております。そして、こちらの
レオンですが、剣の腕を見込まれて我が家の養子となった者です。
剣の達人です。」
「そうか、貴族なのじゃな。そして、まだ小さいのに剣の達人とはな。」
それから、ペティオスを指し、
「そなたは、どうなのじゃ?蛇の髪とはなかなか変わっておるのう。」
「はい、私は、ゴーゴン族でございまして、ゴーゴン族は皆、蛇の髪で
光線で人や物を石に変えることができます。そして、私も、先ほど話に
ありましたモンストラスの出身でございます。人からは奇異の目で見られる
面もありますが、あまり気にしないようにしております。」
「そうなのか。だが、そなたのような種族が人の前に出ることはよいことじゃ。」

それから、ローランを指し、
「そなたは、どのようなことをしておるのじゃ?」
「はい、私は、詩人をやっております。詩を書いて音楽にして、広場で歌って
おります。」
「そうなのか、一つ私に聴かせてくれないか。」
「えっ、私のでよろしければ…。」
そして、ローランは1曲、天皇や関白の前で歌を披露した。
「おお、良い歌じゃのう。」
「ありがとうございます。」
「それでは、私たちも何かもてなさねばなるまい。私たちも歌を披露しよう。」
そして、天皇自ら、和歌を吟じ、続いて、関白や和歌の上手い公家たちが
和歌を吟じた。そして、それらの和歌を関白がロアたちに解説をした。
その後、天皇が、
「そなたたちは剣士であるかのう。それでは、武芸もお見せしよう。」
そう言って、滝口の武士たちを呼び、乗馬や弓、刀での試合を披露した。
それから、食事に招き、和食ならではのシンプルでありながら豪華な食事を
用意した。

祭りの当日、江戸の街はいつも以上ににぎわっていた。たくさんの露店が
立ち並び、たくさんの神輿が街を練り歩き、威勢の良い掛け声が
あちらこちらで聞こえていた。
「おお、にぎやかで良いじゃないか。」
ロアが言うと、レオンも、
「これは面白いな。本当に威勢が良いな。」
ガーネルドは、
「そうじゃろう。庶民はみんなこれを楽しみにしているんだよ。」
そうして、ロアたちは、街のあちこちを見て祭りを楽しんでいた。
そして、祭りの盛り上がり方に気を良くしたガーネルドは、
「どれ、僕も一発景気良くやりますかね。」
と言って、おひねりを取り出し、通りに派手にばらまき始めた。
それを見ていた人々は、ガーネルドがばらまいたおひねりを拾い始めた。
「もっと楽しくやろうぜ!!」
そう言ってさらにおひねりをばらまき始めた。そして、それをちょうど
輿に乗って通りかかった顕寧上皇が見ていた。そして、輿から降りて
ガーネルドの所にやってきた。
「なかなか派手に楽しんでますね。私も加わらせて頂きますよ。」
そして、上皇もおひねりをばらまき始め、人々が拾い始めた。
それから、上皇に近づいてきた人には、優しく対応し、丁寧におひねりを
渡していった。

最初は、ロアたちもあっけに取られていたが、それからロアがレオンに、
「俺たちはこれで行くか。」
と剣を指さした。
「おう、そうしようか。だが、遠慮はしないぜ。」
そして、二人は剣を抜き、剣の試合を始めた。これには、大勢の見物客が
見に来ていた。「喧嘩か?」とか「もっとやれ!!」といった掛け声の中、
2人は本気で闘った。ほぼ互角の勝負だった。それからしばらくして、
傾き者が2人ほど、刀を振りかざして、ロアとレオンの中に乱入した。
びっくりした二人は、思わず持っている剣で傾き者の刀を受け止めた。
「お、やるのか?」
「おうよ、入れてくれ!!」
そして、ロアとレオン、傾き者2人の剣と刀の試合になっていった。
これは大いに盛り上がっていった。さらにもう一人の傾き者が、
「俺の相手をする奴はいないのか!!さあ、誰か出て来い!!」
と大声で叫び始めた。「仕方ないですね」と思ったフォルミルスが
剣を抜いて、
「僕で良ければお相手しますよ。」
そして、フォルミルスも傾き者と決闘を始めた。
その様を見ていた、フィムとローランは、
「俺たちも何かやるか。」
「そうね、やりましょう。」
そして、フィムは、人々に自分の魔法を見せて人々を驚かせ、ローランは、
楽器も持って、自分の詩を歌い始め、人々を大いに楽しませた。

それから、ペティオスも通行人に声をかけられた。そして、ペティオスの
髪の蛇を持って、
「なかなか変わった髪をしているじゃないか。お前さんも何かできるのかい?」
戸惑ったペティオスは、
「そうですね。物を石にしたり、髪の蛇を巨大化させることならできるけど。」
と、ゴーゴンが持ち得る特性を生かして、物や人を石化させたりして人々を
驚かせた。人の場合は、すぐに元に戻しましたが。その石化したものを
ハンマーで砕いて石にしたことを見せたりしていた。それから髪の蛇を巨大化
させたり、自身が持っているバードロッドで素早い突きを見せたりしていた。
こうして、ロアたちは祭りを楽しみ、人々を楽しませてもいた。

そして、夕方になり、祭りが終わると顕寧上皇が、ロアたちを近くの
天皇家ゆかりの神社に連れていき、そこで参拝した。そして、上皇が
ここの神社について語り、ロアたちも聞き入っていた。特にガーネルドが
関心を示した。そして、上皇は、
「今日はあなたたちのおかげで祭りを楽しめました。ありがとうございます。」
「ああ、俺たちも楽しかったぜ。上皇陛下もなかなか素晴らしかったぜ。」
とロアが返した。
「また、貴国にもお礼を送っておきますよ。また、お会いしましょう。」
「ありがとうございます。まだ、どこかで。」
そう言って、ロアたちは神社を後にした。そして、翌日、ミルラード王国に
帰っていった。
write:2018/07/13 rewrite:2018/07/15 update:2018/07/16