Mirlard!(ミルラード!)
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STORY

 

第13話 鎮魂序曲
ミルラード王国の首都グリュックの通りでロアたちは笑談しながら通りを
歩いていたが、その時、傷だらけで、血塗れになって首が切断されている人が
ふらふらになりながら通りを歩いていた。
「な、何だあれは…。」
「ゾンビ!!??」
怪訝な顔をしながら見つめていたが、何か辛そうな感じだったので、恐る恐る
話かけてみることにした。
「おい、大丈夫か??」
「ああ、ありがとう。」
「どこかで休ませたらどうかしら?」
「ああ、そうだな、そうしよう。ここだと人を驚かせそうだしな。」
「ああ、本当にすまない。」
そして、裏通りの人通りの少ない所に行って休ませることにした。
「一体、何があったんだ?」
「私の名は、ユニゾン。この国のエルストック領に住んでいる者だ。」
「エルストック領って言ったらフィムの弟が治めている領土だよな。」
「ああ、そうだな、そこの人だったとは。」
そして、それからユニゾンは、ことのいきさつを話し出した。

それは、ユニゾンが、キャンディート王国に旅行に行っていた時だった。
キャンディート王国は、ミルラード王国の北東にあり、隣の北にある
アルトール王国の西隣にある国で少々治安は悪かった。
首都のキャメルグラードでテロがあり、それに巻き込まれる形で、無実で
あるにもかかわらず逮捕されてしまった。そして、詳しい取り調べも
しないまま死刑判決を出されてしまった。ユニゾンは、無実を訴えたが、
何一つ聞き入れてはくれなかった。ユニゾンには、妻と小さい娘が1人いたが、
「せめて家族には会わせて欲しい」と必死で訴えるもそれも聞き入れては
くれなかった。

そして、闘技場での公開処刑の日、ユニゾンは、妻と娘に会いたかったという
強い思いを抱きながら、無念の思いで処刑台に座り、執行人の斧で首を
切り落とされた。だが、突然、光が現れ、声がした。
「お前をまだ生きれるようにした。さあ、家族の元に行きなさい。」
ふと気が付いたら、首は切り落とされただが、まだなぜか生きていた。
胴体も動くことができた。執行人は、斧を側に置いてユニゾンの首を
掲げていた。そこでユニゾンは、側に置いてある斧を手に取り、執行人に
斬りかかった。執行人は振り向いて驚いたら、斧が執行人の顔面に
突き刺さった。執行人は叫び声を上げ、ユニゾンの首を落として倒れた。
ユニゾンは、自分の首を拾い上げ、倒れた執行人の剣を持って立ち上がった。

他の兵士や観客はうろたえ、恐れおののいた。だが、兵士の一人が、
「この化け物め、殺してやる!!」
と叫び、斬りかかったが、ユニゾンはその兵士を切り倒し、闘技場の出口に
向かい走って行った。そして、闘技場を出ることができたが、それからは
必死でミルラード王国に向かって走って行った。敵兵が追ってきて、
時々振り向いたりもしたが、それでも走り続けた。追いつかれた時は、
剣で戦って振り切ろうとした。斬りつけられ、傷だらけになっても必死で
敵と戦い、斬り倒していった。だが、危機一髪の時は、なぜか、天から矢が
降ってきたり、敵の周りが爆発したりしてその都度、危機を乗り越え、
逃げ切ることができた。

ユニゾンもキャンディート王国を抜け、アルトール王国からミルラード王国に
入ってからは、だいぶ追っ手も少なくなってきた、そこで少し安心したのか、
だんだん疲れも出て、足取りもふらついてきました。そして気が付いたら、
首都のグリュックまで歩いて来ていました。

こうして、ロアたちは、ユニゾンの話を聞いていました。
「そうだったのか、そんなことがあったとは。」
フィムが思わず言った。
「しかし、何かあなたを助けてくれた者はいそうだな。それが何なのだろう?」
「ねえ、この人を助けてあげましょうよ。まずは治療をして。」
そして、ペティオスが言う。
「この人を家族に会わせてあげようよ。このままじゃ可哀想だよ。」
「そうだな、家族に会わせてあげよう。俺たちも協力しよう。」
そしてフィムは、
「エルストック領なのはちょうどいい。弟のディシェルにも話をつけておくよ。」
「とにかく、安全な場所に連れていきましょうよ。」
「そうだな、城の俺の部屋が一番良いかもな。」
そして、ロアたちは、ユニゾンを隠すようにして、城の自分の部屋に
連れていき、薬草や包帯などでユニゾンを治療した。だが、それでも完全に
傷は癒えることはなかった。

翌日、フィムは先にエルストック領に行き、弟の領主であるディシェルに
話をつけに行った。そして、ロアたちは、ユニゾンを家まで連れていくための
準備をした、ローランが馬車を用意し、さらにその翌日に出発した。
2日後にユニゾンを連れている途中でフィムと合流した。
「ロア、ディシェルに話をしてきたよ。」
「おお、そうか、ありがとな。ところで、その人たちは?」
「はい、我々は、ディシェル様の命でフィムさんについて来た者です。
 ディシェル様よりユニゾンさんの護衛をするよう指示され、それで来ました。」
「ああ、本当に。そこまでやってくれるのはありがたいです。こちらこそ
 よろしくお願いします。」
そして、ユニゾンも馬車から降りてきて、
「私どものために、領主様までここまでやっていただいて、もったいないです。
 ありがとうございます。よろしくお願いします。」
そうして、ロアたち一行は、ユニゾンの家まで向かうことになった。

2日後ロアたち一行は、小さな村にあるユニゾンの家まで到着した。
そこには、ユニゾンの妻のカトリーヌと、娘のエメが住んでした。そして、
家事や子育てをしながら、ユニゾンの帰りを待っていた。そしてロアは
話しかける。
「あの…、ユニゾンさんの奥様のカトリーヌさんですね。」
「はい、うちの旦那をご存じで…。」
「はい、そして、今旦那様をお連れしてきました。」
「そうなのですね!!ユニゾンは生きているのですね!!」
「それが、実は…。」
そして、事の次第をカトリーヌに話をした。話を聞いたカトリーヌは、
驚いたと同時に涙した。そこへ、ユニゾンも馬車から降りてきて
カトリーヌの元へやって来た。
「カトリーヌ…。」
「あなた…。」
「ただいま。ごめんよ、こんな姿になって帰ってきて。」
「いいえ、それでもこうして帰ってきてくれたのは嬉しいです!!」
そして、ユニゾンに抱き付き、涙にくれた。それから、娘のエメもやって来て、
「パパ…。」
「エメ、ごめんよ。こんな風になってしまって…。」
そして、二人に抱き付いた。
しばらく経って、カトリーヌがユニゾンに聞いた。
「しかし、誰があなたをこんな風に助けてくれたのでしょうね。」
「さあ…。」
「それはあたしだよっ!!」
そして、馬車のそばから小柄な娘が現れた。
「あなたは??」
「あたしは、死霊魔導士のティセナ。キャメルグラードの闘技場で処刑を
 見ていた時、ユニゾンさんの心の声が響いて来たんだよっ。心を痛めたので、
 それで家族のものまで送り届けよう、そう思って、肉体に魂をつなげておく
 魔法をかけていたのさっ。あと、天からの矢や、爆発も全部あたしが
 やったものだよっ。」
それに皆が驚いた。それからフィムは、
「肉体に魂をつなげておく魔法なんて…相当魔力が高いのだな…。」
と驚いた。
「まあ、あたしももう575歳のババァだからね。もう本当の顔なんて
 こんな感じだよっ。」
と、自分の顔の皮を剥がすとその顔は骸骨になっていた。亡くなった若い娘の
皮をかぶっていたのだった。これには、皆もさらに驚いた。
「ただ、ごめんよっ。首まで繋げるだけの魔力がなかったんだ。あたしも
 まだまだ修行がたりないねっ。」
「いえいえ、ここまでしてくださっただけでもありがたいです。」
「本当にありがとうございます。」
こうして、ユニゾンとカトリーヌはティセナに、そしてロアたちに礼をした。
それから、カトリーヌは皆に料理をふるまった。シチューや鶏肉、サラダなど
数多くのごちそうが載った。そしてそれを皆で頂いた。その後、家には、
ユニゾンとカトリーヌ、エメの3人だけにしてロアやティセナたちは外へ
出て行った。そして家族3人の団らんの時間となった。それから1時間後、
キャンディート王国の兵士の軍団がやってきた。
「何だ何だ?キャンディート王国の連中か?」
「そうだ、ユニゾンがここにいるのは分かっている。ただちに引き渡せ!!」
「せっかくの家族団らんをぶち壊そうとはあんたたちもずいぶん無粋だね。
 そうはさせないぜ!!」
「ならば力づくで連れていくだけだ!!やっちまえ!!」
それから、兵士たちとの乱闘になった。ロアやレオンは剣で戦い、フィムや
ティセナは魔法を駆使して戦った。ペティオスは、杖や石化光線で戦った。
どちらかと言うと五分五分の戦いだった。しばらくして、ロアたちに援軍が
やってきた。
「人んちの領土でずいぶんやりたい放題やっているじゃないか。お前らの
 勝手にはさせないぞ!!」
そうしてやってきたのはディシェルだった。自分の軍隊を連れて援軍に
やってきた。さらに、この騒ぎを聞きつけ、ユニゾンも外へ現れた。
「私のために戦って下さっているのに、私だけ家にいるわけにはいかない。
 私も戦うぞ!!」
「分かった!!みんなで追い返そう!!」
そして、ロアたちは、キャンディート王国の軍団に再び立ち向かった。
今度は援軍も得てロアたちは、キャンディート王国の軍団を打ち負かして
いった。そして、ついにキャンディート王国の軍団を追い返したのだった。
「やったな!!」
「へっ、ざまあみろ!!」
レオンは叫んだ。それから、ユニゾンが、挨拶をした。
「私のために戦って下さって、そして、領主様まで来ていただいてありがとう
 ございます。」
「いいえ、あなたも私の領土の民。心を配ってやらねば。」
ディシェルは語った。だが、そこでユニゾンが、胸を押さえうずくまった。
「済まないっ。あたしの魔法ももうここで限界だっ!!」
「あなた!!」
カトリーヌが駆け寄り、ユニゾンをベッドへ連れていった。

ユニゾンは、家のベッドで寝かせられ、皆が見守っていた。
「私はもうここまでだ。カトリーヌ、エメ、最後に会えて本当に良かった。」
「あなた!!しっかりして。」
「ティセナさん、ロアさんたち、そして領主様。こんな私のためにここまで
して下ったことに感謝します。本当に皆さま、ありがとうございます。」
「こうしてみんなに支えられて、私は幸せ者だ。それでは、しばらく
 眠らせてもらうよ。おやすみ。」
「あなた!!」
こうして、ユニゾンは息を引き取った。その姿を見て涙にくれるカトリーヌと
エメ、それをロアたちはずっと見守っていた。そして翌日、皆でユニゾンの
埋葬を行い、祈りを捧げていった。
write:2018/10/10 rewrite:- update:2021/11/14