48.古代エジプト及び中近東コレクションと学生活動の10年間
~エジプロの原点を発掘する~
昨年12月22日は、東海大学で開催された小野智仁さんの講演会に
行ってきました。その時の小野さんの講演です

講師の小野智仁さんは、また「エジプシャン・プロジェクト」ではなく
まだ名前が無い学生プロジェクトの頃から10年加入しておられた、初代の頃の
方です。ICPP(International Cultural Properties Project)の頃から
おられた方です。

AENET(古代エジプト及び中近東コレクション)では、コレクションの
整理と修復、古代エジプトのヒエログリフの勉強会、「受け継がれる祈りの心」、
神への祈り」の展示は、企画まで、我々の計画で開催しました。
ワークショップ、見学会、角川武蔵野ミュージアムで開催された
古代エジプトの教科書」では、東海大学の収蔵品も展示されました。
あと、新宿のこどもフェスタでワークショップの実施もしました。

2013年に資料整理を考えていたが、SEC(サイエンス・エンジニアリング
カレッジ)からのワークショップの依頼が多くて、研究と整理をしたいが
なかなかできませんでした。

「エジプシャン・プロジェクト」は、10周年を迎えましたが、最初は、
自分を含めて3人で活動をしていました。ICPPは、2012~2016年に在籍
していました。

1.ICPPの設立まで
東海大学が所蔵している鈴木コレクションは、2010年に写真資料
(写真・パピルス・土器・織物など)を寄贈されてかしゃかしゃになっていた
物を修復作業をしており、学生が細々と整理作業をしていました。
学生からボランティアで活動をしており、2013年から整理作業を行いました。

石器などの資料の扱い方を指導したり、資料をどのようにしたら後から
見れるかや移動の方法が分からず、モチベーションが悪かったです。

早稲田大学や鶴見大学などからもボランティアで学生が参加したり、
山花京子先生の石器に関するイベントを開催し、鈴木コレクションや
石器の見方を学びました。そして、整理をしてきますが、整理する人数が
減っていったため、学生が整理作業をしたり、整理の規模を拡大したり
しました。

2.ICPPの設立とその活動
2014年2月に、鈴木コレクションの整理・保存を行い、地域にも紹介しました。
見学祭の準備を行い、ユーラシア文化部とのコラボレーションで2015年に
横浜で「古代エジプト ファラオと民の歴史」を開催しました。パピルス文書
の保存やコレクションの整理作業など、ここで得た知識、技術を公開し、
質問をされたら、また調べてといった作業の循環でした。

新たな人員を募集し、15000点の写真資料の整理のために新しいプロジェクト
を立ち上げました。2014年に収蔵庫を移動を行い、湿気から守れるより良い
環境で収蔵しました。ヒヒなど貴重な物は、ケースに入れて移動し、
また、ヒヒ、ミイラの棺のふたを整理し、2014~2015年には貸し出せる状態に
して注記も付けました。コレクションの整理作業を行い、注記、寸法を調べ、
写真撮影には回転台を用意して写真撮影を行いました。

パピルスの修復は、2013年度からスタートし、パピルス文書の修復技術の継承
していくために、トレーニングで後輩に教えたりする作業を2014~2015年に
行いました。また、米国ミシガン大学でここにある物を修復して欲しいと
依頼があり、欠損や劣化の調査、修復、修復前と修復後を見比べるなどを
やってきました。

オープンキャンパスや建学祭(東海大学湘南キャンパスで行われる学園祭)
を開催し、サテライトキャンパスとして外に行っての開催したりしてきたこと
が東海大学が推し進めた活動の一つです。整理作業の知識を説明したり、
修復体験、パピルスについての講義をしました。また駅前に持って行って
実物の説明なども行ってきました。

3.横浜ユーラシア文化館とコラボレーション
2015年に横浜で開催された展覧会「古代エジプト ファラオと民の歴史
にて貸し出して展示をしました。2013年末に大きな展示会という話を聞き、
2014年2、3月に山花京子先生から特別展示を行うとし、4月に山花京子先生
と学生で学生団体を立ち上げました。

横浜ユーラシア文化館とのコラボレーション、博物館での展示は大変で人手が
多い方が助かりますが、話題性にもなるということで調整は山花京子先生が
行いました。

展覧会は、2015年1月31日(土)〜4月5日(日)に開催されましたが、
外部とのコラボレーションは初めてでした。6月の会議で山花京子先生が
展示キャプション、パネル、展示解説、ワークショップを行うことが
決まり、特に展示解説に時間をかけました。

展示キャプションは、それを理解するための説明を書いたり、化粧品は、
どんな風に使っていたか、どんなファッションだったか、古代エジプトの
社会を知ってもらうために作りました。展示キャプションは、20個
作りましたが、使われたのは10個あれば良いくらいでした。

パネル展示は、パピルスに関する活動の展示を作り、展示解説は、200点に
ついて作成しました。そのためには、200点全てについて勉強しなければ
なりませんでした。

「民の歴史」なので、より身近に感じるために古代エジプトの社会を勉強する
ための勉強会も行いました。そして、どこに何の文献があるのか分かるように
なっていました。

来館者が分かるような資料や関連する写真を集めて自前で準備しました。
当日は解説して本物の資料を全部並べて先生や先輩方に模擬解説をして、
情報技術センターに教えてもらって準備しました。関連ワークショップは、
他のワークショップと話し合って設定しました。

当日は、音声解説ができないかということで、QRコードを読み取ると、
音声が聞こえて展示解説をするものにしました。

4.パピルスプロジェクト
東海大学が所蔵するパピルスは、400点と日本最大のコレクションなのですが、
大半が第3中間期から末期王朝時代のもので、死者の書がバラバラの破片に
なっていたり、他のパピルスも中にノート、ページの間にパピルスが
ありますが字も読めない、扱いが難しいのですが、史料価値が高いので
展示会で広く活用したいという思いから、パピルスの修復を行い、
2013~2015年でやっていたプロジェクトでした。

日本には、パピルス文書を保存できる人はいませんでした。パピルスは、
ペーパー(Paper)の語源になったとも言われておりますが、和紙や紙とは
違うので、保存、修復できる人はほとんどいなかったので、
パピルスの修復師養成ワークショップを開いて保存、修復の方法を習おうと
しました。修復術を習うために12名の学生を先行させて12名でワークショップ
を行いました。

そして、ドイツから招聘したミリアム・クルシュ先生の講義も聞きました。
現代のパピルス修復をしてみて教えて頂き、終わった後で本物の修復へと
進みました。ミリアム先生から指示されますが、できないからミリアム先生に
講義をしてもらったりしました。自分たちがどのように修復するか、
これだけではできなくて、透けて見える物、見えない物といったパピルスの
特性を判断し、活用するための封入を行いました。ガラスの切り方や、
どうやって挟んで封入するかを学びました。

2014~2015年には海外研修を行い、アメリカのミシガン州や
ドイツのベルリンで研修、勉強をして、より高度な修復術を学びました。

ミシガン州では、新たな修復方法や水が伝わらない安全な方法を学びましたが、
これだけでは不充分で、米国ミシガン大学のパピルス修復センターの
ライラ・ロー・ラム上級修復師が湿式の方法で湿ったパピルスが扱いやすく
なると教えて頂きました。

高度な水分コントロールが難しく、インクも水に溶ける物と溶けない物が
あり、インクによってこの方法が使えるのかを学びました。フレーミングの
テープでの封入やパピルスを固定するための和紙を使用しているが、テープの
粘着剤が悪さをすることがあるので、どんな材料を使うのが良いのかを
学びました。

パピルスの保存方法は、フォルダに挟んで横に安置する、縦置きもある、
ガラスの上に横置き、ガラスのフレームでフレーミングする方法を学びました。
炭化した物などに使いたいという話もありました。また、新たな
フレーミング方法をドイツのベルリンで学び、木やガラスに挟んで、
8年後、江戸東京博物館で行われたエジプト展で修復された物が展示
されました。

旧修復の除去については、糊の接着剤が付いてしまうものがあり、ドイツの
ベルリンには山のようにあります。保管の状態や紙切れになっている物、
第二次世界大戦でロシア軍が持って行ったものもあります。パピルスも
巻物から、時代が新しくなると本のようなコデックスで保存されている物
があります。

2015年にパピルス文書に関するラウンドテーブル(意見交換会)を開催し、
研究の成果を発表しました。そして、意見交換をしていくのですが、
開催前に修復チームと解読チームで文字の確認をし、破片どうしの接合、
成果物とその後についての話がありました。あと、本の出版やホームページを
整えて、海外の人に向けて後悔した所、アメリカの先生が訪問し、
「この3枚はくっつきますよ」とアドバイスを受け、その後、本を出版
しました。

パピルスプロジェクトの3年間は、できるかどうか分からないけど、やりたい
という人が多く遺物を写真撮影して3D化したいと言っておられた人も
いました。そういう人が多いので、その精神が継承されています。

この後、東海大学のプロモーション映像が流れて、古代エジプト全体に関する
パピルス文書の修復と保存を自分が触って直せるのが嬉しいことや
文化財も持っているのも強みで、それらを直接触ることができる。
ここまでやっているのは東海大学だけという内容の映像でした。

5.総括
今回は、東海大学が10年間やってきたICPPやエジプシャン・プロジェクトで
行ってきたことについての講演でしたが、鈴木コレクションを寄贈されてから
それらの遺物の修復や保管の方法や2015年に横浜で行われた展覧会についての
舞台裏の話、パピルスの修復作業についての話があり、とても興味深く
聞かせて頂きました。遺物の修復や保管、パピルスの修復作業は、最初は
分からなかったけど、様々な研修や外国の先生の話を聞きながら
色々と模索しながら方法を勉強していった姿が素晴らしいと思いました。

今後もエジプシャン・プロジェクトは続いてくれると思いますが、
今後、どのような活動をしていくのか、それをまた楽しみにしていきたいと
思います。
write:2024/03/20 rewrite:- update:2024/04/09


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