59.シャブティについて その2
今回は、古代エジプトの埋葬品の1つの「シャブティ」についてですが、
少し考え方が変わったので、そのことについて書こうと思います。

シャブティとは、時代によっては「シャワブティ」とも「ウシャブティ」とも
呼ばれるもので、全身が布で固く巻かれたミイラの姿をした小型の人形の
ことで、土製のもの、ファイアンス、木、石、青銅などさまざまな材質の
ものが発見されています。本来は、「イアルの野」と呼ばれる来世の理想郷で、
死者が自ら行わなくてはならない農耕をはじめとする労働を代行して
もらうためのものです。古代エジプト語では、「(死者に代わって)答える者」
という意味があります。

2015年3月にシャブティについて書いた時は、「シャブティという発想ですが、
僕はとても素晴らしいと思っています。なぜなら、これがあるために
古代エジプトでは殉死という考えがなくなったからだと思うからです。」
ということを書きましたが、2023年7月に近藤二郎さんの講演を聞く機会が
あり、そこで少々考えが変わりました。

講演で近藤二郎さんは、「初期王朝時代(第1王朝)は殉葬だったのが、
古王国時代では石灰岩製、古王国末期~中王国時代では木製になり、
中王国時代でシャブティに変っていきました。初期王朝時代は、死後の王に
仕える人を200~300人埋葬していたが、次の王になった時には、前の王に
仕えていた人が次の王に仕えられないということで殉葬にもそのような
メリットがあります」と話しておられました。

なので、殉葬もシャブティもそれぞれにメリットはあったのだなと思いました。
ですが、AIで殉葬からシャブティへの背景と心境の変化を調べたらこのような
結果が出ました。

● 背景と心境の変化:

倫理観・人道観の変化
実際の人間を犠牲にすることへの倫理的な忌避が徐々に強まったと
考えられます。シャブティの登場は、宗教的儀礼を保ちつつも、実際の命を
守るための代替策だったのです。

死後の世界観の変化
オシリス信仰がより広く浸透し、「死者審判」や「死後の報い」という概念が
発達。死後の世界は、ただの王の支配下ではなく、善悪の審判を経て個々が
存在する場所へと再構築されていきました。

象徴性・形式化の進行
宗教的儀礼がより抽象化・象徴化され、シャブティ人形という「象徴的代替物」
で信仰が満たされるようになります。実際の行為よりも、
「それを象徴するモノを持つこと」が重要になったのです。


こうして見ていると、実際の人間を犠牲にすることへの倫理的な忌避が
徐々に強まったことやオシリス信仰がより広く浸透し、近藤二郎さんが
話されていた「人は死んだらオシリスになる」という考えが浸透し、
殉葬からシャブティを埋葬することへとそのような心境の変化があったの
だなと思いました。

なので、前回よりも少し考え方が変わりました。殉葬もシャブティも
それぞれにメリット、良さはあるのですが、それを前提にしてもやはり
シャブティの考え方は素晴らしいなとということに自分の中ではたどり着き
ました。こういう所にも古代エジプトの叡智というものがあるような
気がします。


シャブティについて
こちら
write:2025/09/19 rewrite:- update:2025/09/28


Back

Archive