22.シャブティについて
今回は、古代エジプトの埋葬品の1つの「シャブティ」について
書こうと思います。

シャブティとは、時代によっては「シャワブティ」とも「ウシャブティ」とも
呼ばれるもので、全身が布で固く巻かれたミイラの姿をした小型の人形の
ことで、土製のもの、ファイアンス、木、石、青銅などさまざまな材質の
ものが発見されています。本来は、「イアルの野」と呼ばれる来世の理想郷で、
死者が自ら行わなくてはならない農耕をはじめとする労働を代行して
もらうためのものです。古代エジプト語では、「(死者に代わって)答える者」
という意味があります。

中王国時代には1体というのが一般的でしたが、新王国時代に入ると、
理想としては1日に1体(365体)と10人ごとに1人の監督官(36体)の
計401体が必要と考えられたようです。ちなみにツタンカーメンの墓からは
413体のシャブティが発見されています。

このシャブティという発想ですが、僕はとても素晴らしいと思っています。
なぜなら、これがあるために古代エジプトでは殉死という考えがなくなった
体と思うからです。古代エジプトでは、初期王朝時代にはまだ殉死が
行われていたようで第1王朝のジェル王の息子ジェト王の死に際しては
殉死者が174名とも言われています。死後の王に仕えるために召使いまでが
殉死に加わりました。ですが、新王国時代のツタンカーメンの墓からは
殉死者が出たという話を聞きません。それは、シャブティが面倒を
見てくれるので殉死する必要がないということだと思います。

そのようなわけで王の死に際してさらに人が死ぬということがなくなった
というのは本当に素晴らしいと思います。古代だったら殉死は当たり前の
ように行われていたのに。こういう所にも古代エジプトの叡智というものが
あると思いますが、どうなんですかね。それぞれの文明にそれぞれの
死生観がありますし。それぞれの考えがありますから。
write:2015/03/20 rewrite:- update:2015/05/24


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