6.蟻の町のマリア
1月23日に教皇フランシスコは、エリザベト・マリア北原怜子(さとこ)さん
が「尊者」と認められたことを発表しました。これにより北原さんは今後、
列福・列聖へと進むことになります。

「蟻の町のマリア」こと北原怜子さんですが、大学教授の娘として裕福な
家庭で育ちましたが、戦後、ゼノ・ゼブロスキー修道士と出会い、東京の
言問(こととい)橋近くにあった廃品回収業に携わる人たちの町「蟻の町」
を訪れるようになりました。始めは子供たちの勉強を教えたり、子供たちの
面倒を見ていたりしたのですが、後には廃品回収業もやって「蟻の町」
の人たちと同じ境遇に身を置き、蟻の町の人たちのためにその身を
捧げつくした人です。朝の5時から起きて蟻の町に行き、リヤカーを引いて
廃品回収業を行い、午後は子供たちが学校から帰ってくると勉強を見てやり、
夕方には小さい子を風呂に入れてそれが終わると、また子供たちの勉強を
見て夜10時頃に家に帰るという生活をしていました。

あと、「蟻の町の焼き払い計画」が上がった時は、蟻の町をどこか別の場所へ
移転できるよう祈り、そして移転できない場合は、都庁の玄関でハンガー
ストライキをする覚悟もしていました。幸い蟻の町は、現在の潮見あたりに
移転することができたのですが、北原さんは移転後の蟻の町を見ることなく
結核で亡くなられます。

聖書の言葉で「あなたがたは、わたしたちの主、イエス・キリストの恵みを
知っています。すなわち、主は豊かであったのに、あなたがたのために
貧しくなられた。それは主の貧しさによって、あなたがたが豊かになるため
だったのです。」(二コリント8・9)とありますが、北原さんはまさに
その言葉を実践した人だったと思います。自らも廃品回収業をやることに
よって蟻の町の住人と同じ境遇になり同じ苦しみを分かち合った人だと
思います。

「困っているから助けよう」と思う人はたくさんいますが、「一緒になって
苦しもう、悲しもう」と思う人はほとんどいないと思います。僕もそこまで
できないと思います。ですので、そのことを実践した北原さんは本当に
素晴らしい人だと思いますし、人への愛を実践した人だと思います。
そして、こういう人こそ、いつか列福・列聖されていってもらいたいと
思います。

僕自身は、北原さんのようにはなれませんが、少しでも他人を思いやる
気持ちを大切にしていけたら良いと思います。そして、北原さんの
取次ぎを願い、祈りつつ、北原さんの列福・列聖が早く実現するよう
願いたいと思います。
write:2015/04/15 rewrite:- update:2015/09/12


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